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| EURO2004 準々決勝 フランス代表 VS ギリシャ代表 その2 |
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| 6月25日 フランス代表0-1ギリシャ代表 |
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試合が終わるとフランスは祭りの舞台を降りて、傍観者になった。まるで彼らギリシャ人の奉るオリンポス12神の最高神ゼウスがその右手に持った雷(いかずち)を晴天に轟かせた、まるで晴天の霹靂な試合になった。
ただ、前回王者で今回も優勝候補にあげられていたフランス。それがエーゲ海の小国の前に沈んだのはどうしてなのか。驚きをもって語られるが試合をほんの少し見ただけで圧倒的な納得を感じたのがこの試合。一緒に来ていた人間でさえ前半途中で寝てしまったと語る様に、僕も前半で最悪延長を覚悟した。そういうゲームだった。そして終わって見てそれが現実となる。そう、この結果は必然だった。
試合開始より攻勢を掛けたのはギリシャだった。王者は攻めさせているのか余裕なのか非常に静かだ。横綱相撲という言葉があるがあれは結果的に勝ったからそう言えるだけの言葉で、裏を返すと積極性に欠けるとも言える。そんな意味での横綱相撲をフランスは取っている。最初からフランスは退屈なサッカーを見せる。
マイボールからの展開の悪さを露呈する。この日ビエラが負傷で欠場した影響もあるだろうが、それだけが原因ではないだろう。ジダンを左に置く事で彼は守備にとらわれ過ぎてしまい、彼がボールを受けるところはいつもセンターサークル付近で、2トップのアンリ・トレゼゲははるか前方に位置している。しかも、低い位置でもフランスは彼にボールを預けて周りの押し上げも遅い。ジダンは元々中央の選手。内に絞る。こうするとギリシャの網に自分から掛かりに行くようなものだ。これではゲームメイクなどない。
それに気を利かせたピレスが孤立する左サイドに顔を出しに行くから余計バランスが崩れる。個々の問題では解決できない程根が深い。アンリ・トレゼゲは前線で良いボールが来るのを待っているだけ。下がって受けにも来ない。一人が下がってDFを引き出せばそこにスペースが生まれたりするのだが、アンリ・トレゼゲ両者がそれを狙っているのか動かなさ過ぎる。能動的に自分から動かないと所謂ポストプレーヤーでもない限り絶好球はもらえない。昔の人はよく言ったもので、「働かざる者食うべからず」まったくその言葉どおりだ。それでもアンリは単発でも裏へ走りこもうとする意識がある分いいが、トレゼゲは全く駄目。
両チームあわせて最大のボールウォッチャーになってしまった。シュートを打つどころか、前を向いてボールを持ったシーンすら記憶にない。10人でゲームをしている様なもの。僕が監督なら前半で交代させる。その程度の出来。グループリーグを見ていても、この二人が機能していないのにサンティニ監督は何を考えて起用したのかさっぱり不明だ。FWを5人連れてきておいてマルレ・ゴブの2人は一度も使われていない。決勝トーナメントに進んだ国ではフランスだけだ。そういうスタッツを見ては「フランスやばいかなぁ」と僕は首を傾げながら見る。
前半、前に出て行くギリシャはそのピレス不在の右サイドから積極的に攻撃を仕掛ける。フィッサスのオーバーラップを誰も止められない。止められないというのは技術的にという事ではなく、そこに誰もいないので慌てて対応しに行った時はスピードが付いているので振り切られてしまうか、慌てた分中にスペースを作りそこをこじ開けられそうになる。ただそうは言っても最後はギリシャの創造性のなさに助けられて、FWに対して有効なパスが出ず、逸れて合わないクロスやグランダーのパスばかりで、それをフランスが拾い細い線で攻める。前半はそのシーンの連続で時間が過ぎていった。ギリシャはよくカウンター一辺倒だという人間がいる。でも実際に見たらそんな事はいえないだろう。堅守と言う方が的確だ。
この日は前半から中盤の決められたポイントでジダンを3人近くで追いかけまわす。低い位置でしか持てないジダンは前線が機能していない今怖くない。3人で襲い掛かり潰しに行く。ボールを下げるなら中盤も無理に追いかけない。引いている訳ではない。FWが常に裏を狙うならそれに応対している、それだけなのだ。自分達で相手に回させる所と突っかける場所を決めているのだ。レーハーゲルは規律を植え付けたと大会前に語っていたが、その戦術理解度の高さを目の当たりにする。奪ったボールもよくあるように1トップにいきなりぶつけたり、ロングボールを出す事はあまり無い。6.7番バシナス、ザゴラキスがパス交換をしながらゆっくり狙いを定める。この日は出場停止の15番ブリザスに代わって入った11番ニコライディスが度々下がってここで綺麗な三角を作り味方の押上げを待つ。シンプルでしぶといサッカーだ。
後半どうフランスが入れ替えてくるのか、手を打ってくるのか見たかったがサンティニは何もせず。本当に彼の采配を疑った。トレゼゲは交代させなかった。ギリシャは狡猾で泥沼に引きずり込む戦いで何もしなくてもよかったからだ。しかし、後半頭からフランスが目を覚ましたかのように攻撃を仕掛ける。リザラズがアンリが飛び出していく。やっとフランス人がいや世界中の人々が待ちわびたフランスの攻撃だ。しかし、レーハーゲルはこれを見越したかの様に選手交代だけでこれを沈静化させた。
ニコライディスに代えて中盤の選手を入れる事でここをより厚くしてパス交換も簡単に許さなくなった。ニコライディスに代わってハリステアスが1トップになった。この選手は前者に比べるとよりポストプレーをする選手で前半もニコライディスが下がって出来るスペースに入り込む動きが多かったが、ここに来て完全にロングボールへの移行となる。つまりここで牽制球を投げた。前線で細かいパスが通せないなら一気に局面を打開できる戦術を選んだ。不用意に前線に力を掛けると刀抜きますと。それもフランスDFの酷さを考えたと思える。
そしてフランスはその罠に落ちた。
ロングボールを簡単に展開されリザラズがチップキックで抜かれクロスを簡単に上げられ、フリーのハリステアスに。彼が自由に飛びゴールの好きな場所にボールを飛ばした瞬間、フランスゴール裏が凍りついた。フランスDFは誰もが、ボールを追う観客になってしまっていた。自分達の役目を忘れたように。
この後サンティニ監督は初めて気が付いたように、攻撃陣を代えてテコ入れするも既に時遅し。しかも選手交代をしてロングボール一辺倒の戦いではフランスには勝ち目はない。元々そういう事を得意としているチームではないのに。砦の様に自陣を固めるギリシャ相手にそのまま時間が流れ試合終了。スクランブルでテストした事の無いフランスにそれで点が取れる力はなかった。ビルトールは今シーズン、怪我もあるがアーセナルで全く結果が残せず解雇になった選手、サハはフルハム・マンUで活躍したとは言え代表では大会前にほんの数試合出ただけで連係も何もない、ロテンに至ってはこの試合が大会初出場で空気を換えるのには荷が重い。それで何が期待できよう。結果論だが、ロテンを入れるなら動かないボランチ1枚代えなければ駄目だったろう。
フランスの選手は試合後まるで眩暈がしたかの様にその場に何人も倒れてしまった。前回の世界王者のプライド、世界有数のクラブにいるプライド、今までの目標のための忍耐と努力。すべてが音を立てて崩れてしまったのだろう。アンリが観客席に拍手を贈るのが精一杯の慰め。
フランス代表の何が駄目だったのか。それは簡単に言えば最初にも書いたが積極性の不足。後ろはジダンに預けたらそれでおしまい。前は前でボールが来るのを待っているだけ。追い越すという攻撃のイメージが出来ていなかった。ネームバリューは一番だったが、これでは相手がどこでも厳しい。ジダンを左サイドに置いておきながら、彼に預けたままの攻撃では孤立するに決まっている。パス交換してジダンに楽に持たせる発想が監督にもなかったし、多くの選手もそれを実行できなかった。ギリシャが勝ったから驚きを持って語られるがそうじゃない。最初からはっきり言ってフランスはおかしかった。
本当に分かりやすい。DFラインは頭数は揃ってはいる。門番の様に。でもそれだけ。スピードもないし、ジダンに預けるともう仕事終了かの様に立ち尽くす。ボランチも前線に顔を出さない。この試合ではピレスが唯一それを気遣い左右のポジションチェンジをするが、彼だけなので逆にバランスが崩れる。FWはボールをもらいにスペースを作らない。肝心のジダンは低い位置で預けられて中に絞ればの網が待っている。
攻撃にバリエーションがないのが痛い。ジダンが機能していないのではない。ジダンだけが機能しているから痛いのだ。こういうジダン心中型の戦術を取るなら彼の黒子に徹する選手が必要なのだが、そういう選手も召集しなかった。ビエラはそういうことをできる選手だが、彼の出場停止を考えていなかったのか。ジダンが出場停止になっていたらどういう戦術を採るつもりだったのか。結局サンティニも2002W杯の時と同じ過ちを犯しただけだった。
ギリシャの勝因はもちろん堅守という事が最初に挙げられる。時代の最先端はDFも積極的にラインの上げ下げを行ってスペースを消す事なんだけど、ギリシャはその逆で殆どラインを上げない。中盤が勝負するスペースを決めて、そこを破られそうになるとDFが出て行く。受け渡しの役割がはっきりしている事で、文字通り「陣」を張っている。FWもセンターライン近くからしか追わない。そして、選手を入れ替えてもそれに適応しうる戦術を組んでいる事だ。CFを代えてもボランチを代えてもその選手の個性に合わせて守備を考える。4-3-3と4-5-1を同じ戦術にしている。つまりそれぞれの「陣」をその数でどうやって連係を取りながら守っていくのか決めているのだ。3年近くレーハーゲルが指揮を採り熟成させてきた結果が実った。
ただ問題点もある。チームの平均年齢が30に近い。ニコポリディス・カプシス・ザゴラキス・ブリザスらは30を超えている。どうやって世代交代をしていくのか、誰がそれをしていくのか。W杯までもう2年、予選はもう目の前。EUROが始まるまで嘗めていた各国もマークが厳しくなるだろう。そこをどうしていくのか、不安な点である。もう一つ。システム的な事を考えるとDF中心でチームを形成している事だが、ややスピードに欠けるのである。今はそれをマンマークで逃れたからいいが、裏へ抜けたがるFW相手にどういう戦いができるのか、これから注目したい。
ギリシャの大騒ぎは見ていて痛快だ。勝っても、当然という顔をしない。もちろんフランスが相手という事もあるが、歓喜歓喜それだけ。それ以上もそれ以下もない。こういうすがすがしいのは気分がいい。選手が試合後万歳をしに行く姿が印象的だ。遠くから見ているとその青と白というギリシャの色がエーゲ海の波を想起させる。(ちょっと言いすぎかな)対照的なのはフランス。サポーターは声も出ない。どうなったんだ?とでも言いたげな表情を浮かべる。「負けたからさっさと帰ろう」という雰囲気でもない。本当に茫然自失という感じで立ちすくむ。帽子のつばを深めにかぶり、悔しいであろう強く握り締めた拳をポケットに無理やり詰め込んでいるサポーターもいた。
さてあの後ろにいる席を替われと怒鳴ってきたフランス人サポの表情はどんなもんだろう。ガッツポーズをしながら振り返った。そこにはもう試合前の威勢のよさは消えていた。両手で顔を覆いながら視線はグランドのどこかをぼんやりと眺めている。もちろん僕らの歓喜なんて目に入っていない。ほら、言わんこっちゃない。席後ろの方が被害少なかっただろうに。それでも優しい僕は彼らに別れの挨拶をして出て来た。
「Au revoir,le bleu」(good-bye,blue:「フランス代表さようなら」と自分にブルーな気持ちが晴れてよかったという嫌味。)とね。きっと彼らの耳には届いていないだろうけど。 |
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